綺麗になんてなれない

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「うん、分かった」  素直に頷いてはみるけど、やっぱり私からは言えないなあ、と思う。  勝手に居心地悪く感じてしまった私は、次の講義の時間には早かったけれど、適当に理由をつけて部室から逃げてきてしまった。  中途半端に空いてしまった時間をちょうどよく埋められるあてもなく、私はゆっくりゆっくり教室に向かいながら一人溜息をついた。  私だって、人が良いから義之の好きにされているわけじゃない。  私は、義之に対して弱みがあるから。これは、私がすべき償い。義之の心に大きな傷を付けてしまったことへの……。  私は立ち止まって、自分の胸元をぎゅっと握りしめた。  いけない。一人ぼっちでもの思いにふけると、どんどん落ちていってしまう。  思い出しちゃだめ、と別のことを考えようとする。でも意識するともう、記憶が蘇るのは止められなかった。 『巴ちゃんはずっと雅義くんに憧れてたから。巴ちゃんにとったら私たちなんてやっぱり子供だし、大人な雅義くんのほうが好きなのは仕方ないんじゃないかな――』  延々と、彼の傷をえぐりつづけた、自分の無神経な言葉たち。それが次々と脳内に浮かんでぐるぐると回る。渦に呑まれて、溺れそうになる。     
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