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人差し指と中指を突き立てたピースマークで、あたしはメガネ越しに勝ち誇るような視線を向ける黒木の眼球をレンズごと貫いてやりたかったけど、生憎あたしは超人的な才能と能力を持つバトル漫画の主人公じゃなかった。固まったままのあたしを尻目に席を立った黒木は、では本日はこの辺にしときましょうか、ありがとうございました。またよろしくお願いしますね。と一礼してドアを出て行った。
今なら分かる。あたしはこう言い返すべきだったのだ。
私にその質問をしていいと、あなたが判断した根拠は何ですか? と。
ファック。覚えてろよクソ野郎。
夢から覚めたあたしにはレイちゃんが居ない。代わりに、クソみたいな男に侮辱された記憶が、壊れたDTMのループトラックみたいにあたしの脳みそに自動再生された。くたばれ、と思いながら欠伸を噛み殺す。
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