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え?・・何?・・なんでこっちを見てる訳? 女子共の視線は半端なく刺々しかった―― 「・・ごめん、俺のせいで五月蝿くて。読書の邪魔しちゃった?」 イケメンはすまなそうに・・私に声をかけた。 「・・・・・」 悪いが・・声をかけられた方が迷惑だ。 女子共の視線が益々、鋭くなって・・視線の棘が身体のあちこちに突き刺さった。 不快だ・・私は返事を返す事なく教室から出た。 「なに、あれ?お高くとまっちゃって、感じわるぅ」 「ほんと、ちょっと綺麗だからってなんなのよ」 「性格悪いのになんでモテるんだろうね?」 廊下に出て直ぐ、口々に私の事を言う声が聞こえた。 ふん、慣れっこだ何とでも言え――! 「ごめん、俺、今日、転校して来たばっかで悪いんだけど・・俺の前で誰かの悪口言うの止めてくんないかな。俺、そういうの嫌いだから」 イケメンの声だった・・私はそのまま足を止めず教室から出た。 結局、私の避難場所は図書室で落ち着いた。 図書室の利用者は誰もいなかった・・私は窓際の一番端っこに座った。 なんだかホッとした・・・やっぱり一人はいい。 誰にも邪魔されず読書ができそうだった。 今、読んでる本はファンタジ―ものだ。 一昨年、本屋大賞を取った作者が以前に書いてた作品で、大賞を取った事を切っ掛けにピックアップされた中の一つだった。 ファンタジ―の世界はいい・・現実逃避するのにもってこいだ。 なんか日が当たってポカポカ気持ちがいい・・・本の活字が何となくボヤけてきた・・少しだけ・・少しだけだから・・・私は心地良い日差しの中・・目を閉じた。 「―い!おい!起きろ!おい・・あ・・」 う・・ん・・誰?・・煩い・・・人がせっかくいい気持ちで寝てるのに・・ん?・・パパ?・・なんか声が違う――へ? ・・誰?・・顔を上げた私の前に見知らぬ・・・超絶イケメンがいた。 「お前、何時間、寝るつもりだよ?もう、午後の授業始まっちまうぞ」 はい?・・この方は誰でしょうか?・・午後の授業って・・・――! 「え~!嘘、なんで?さっきは迄、一時間目の休み時間だったのに?・・あ~!お昼どうしょう・・購買しまっちゃう」 私は思わず頭を抱え込んでしまった。 「ぷっ、ふっはははは」 なに?目の前の超絶イケメンがお腹を抱えて笑ってた。 「くくっ、ほんと、お前、面白いのな。授業さぼった事より昼飯の心配かよ?」 超絶イケメンは目尻の涙を拭きながら私を見てた。 いくらイケメンでも見も知らぬ人に笑われるのは気持ちのいいものではなかった。
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