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「明日は何時から?」
舞が幸雄に聞いた。
「開会式が9時からで、五分団は3番目だから10時くらいじゃないかなぁ」
自信なく幸雄が答えた。
二人は町内のホテルのラウンジにいた。時刻は午後10時を過ぎたところだ。舞は仕事が終わってから幸雄と待ち合わせをして30分前に落合った。
舞は淡いオレンジ色がベースの柄が入ったキャミソールの上に白い半袖の襟付きシャツを羽織っていた。ブラウンのショートスカートから覗く足が組み替える度にガラスのテーブル越しに幸雄の目の位置から見える。
「じゃあ、9時半に行っていれば間違いないね」
「そうだね。開会式が終わった頃だし」
舞の足が気になる幸雄。
「ご飯は食べたの?」
「うん。普通に職場で食べたよ」
「それじゃあ、帰ろうか・・・」
「う~ん・・・」
舞はコーヒー飲んでそれだけなの? と思った。不満に思いながらも幸雄の後に従った。
ホテルのエントランスホールに差し掛かったとき舞が、
「湯畑でも散歩する?」
と幸雄に聞いた。
「え? 恥ずかしいよ。誰かいるかもしれないし」
と返す幸雄。
舞は少しムッとした。
駐車場に停めてある幸雄のステーションワゴンに二人は乗った。走り出せば間も無く舞の寮に到着してしまう。
「緊張してる?」
舞が運転する幸雄を覗き込んで言った。
「いや、何か今は自信がある。昨日ね、教官がみんなの緊張をほぐしてくれたから楽になったんだ」
前を見ながら答える幸雄。
「そう。よかったね」
「うん」
舞の寮に到着した。
「それじゃあ」
と幸雄は舞を見た。
「・・・・・・」
舞は下を向いて何か考えている様子だ。
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