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幸雄はそれに気を遣い、
「明日は無理に来なくてもいいから」
と言った。
「・・・・・・」
黙って舞は幸雄を見た。そして困ったような表情で、
「白鳥さんはそれでいいの?」
と急に言った。
「え?」
何か怒らせたのかと焦る幸雄。
「大事な大会前に会ってコーヒー飲んで『バイバイ。明日は来なくていいよ』なんて・・・」
思い詰めたような舞の顔に幸雄は困って、
「え? 別に俺は・・・」
「別に何?」
今までに聞いた事がない舞の強い口調だった。
「え? ど、どうしたの?」
幸雄は言葉が見つからなかった。その時、別の車が駐車場に入ってきた。ヘッドライトが二人を照らす。
「白鳥さん、とりあえず車出して」
舞の言葉に従い車を発進する幸雄。
幸雄は100mほど離れた土産屋の駐車場に車を移動した。この時間は閉店となっており誰もいなかった。
「・・・・・・」
車の中で二人はしばらく無言だった。
「ごめんね、さっきは」
と幸雄は意味も分からず謝った。
「だから、何がゴメンネなの?」
「ええ?」
舞はどうしてしまったのか、幸雄は困り果てた。
「・・・・・・」
黙り込む幸雄。
見かねて舞は決心をして言った。
「私はこれ以上、白鳥さんと会う必要があるの?」
驚いて舞を見る幸雄。
「え? 必要だなんて・・・」
「どうなのよ?」
「どうって・・・」
「ちゃんと答えて!」
舞の目に涙が浮かんでいた。
「俺は・・・会いたい・・・」
幸雄は言う時が来たと、ようやく気が付いた。
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