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「・・・それで?」
下を見てポツリと舞が言った。
「俺は、こんな男だから、その・・・」
「・・・・・・」
幸雄の言葉を待つ舞。
幸雄も下を向くと話し始めた。
「どうしていいか分からなかった」
「・・・・・・」
「舞ちゃんに何を言ってやればいいのか、本当に分からなかったんだ。でも舞ちゃんがいてくれたから仕事も練習も頑張れたし、何をするにも力が出た・・・」
「・・・・・・」
下を見たままの舞。鼻をすすっている音が聞こえる。
「告白なんてした事ないし、断られたらどうしようって不安のほうが大きくて・・・」
「・・・・・・」
「ここまで舞ちゃんに言わせてしまって情けないけど、今なら言えます・・・」
舞が少し顔を上げ、ちらりと幸雄を見た。
幸雄はその舞を見た。そして、
「俺、厨房に出入りしている頃からずっと舞ちゃんの事が好きでした」
「・・・・・・」
幸雄を見つめる舞。
「今はもっともっと好きです。明日は応援に来て下さい」
それを聞くと舞はシートベルトを外し、いきなり幸雄に抱きついた。
「あ!」
驚く幸雄。
「もっと早く言ってよぉ」
と舞は耳元でささやくと、
「無理して私と付き合っているのかと思っちゃった」
と幸雄の顔をまじまじと見た。舞の鼻の頭が赤い。
こんなにも近くで女の子の顔を見たことがない幸雄は目のやり場に困り動揺しながらも、
「ごめんね」
と微笑んだ。
「もう!」
と言うと舞は幸雄の頬にキスをした。
幸雄は体中に力がみなぎるのを感じた。こんなにも生きている実感を得た事はなかった。
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