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俺の美しさを歪めることは罪だ
風紀委員長のお前が居ると騒ぎが収まらないという言葉に納得し、1人帰路につく。因みに転校生は校則違反で風紀室に連行された。騒ぎ起こしたのは俺だが、俺は罪にとわれない。美しすぎる俺のせいで騒ぎが起こる前例は多々あったので、風紀もそれを理解しているのだろう。俺の美しさを認めない集団に美しすぎる俺の罪を裁くことはできない。だが、たとえ俺が大罪を犯したとしても俺は罪にとわれないだろう。周囲が俺の罪を否定するので、自ら認めない限り、おれの身は常に潔白だ。心すらも美しい俺なのでそんなことにはなり得ないが。
生徒会室に着き椅子に腰を下ろしたところで、背後から音もたてずに長髪の男が現れた。肩がピクリと揺れたが、相手は何も反応しない。美しい俺の美しくない行動を無かったことにする彼は俺の親衛隊長だ。
「会長様、お昼はどうされますか」
「頼む。今日はオムライスの気分だ」
「御意」
暫くして運ばれてきた料理を見て溜め息をはく。了承していたにも関わらず出てきたのは温野菜とサラダチキンだ。
「……オムライスはどうした」
「今朝は菓子パンをお召し上がりでしたので、オムライスですと糖質過多かと」
「俺の言葉を無視することは罪だ」
「会長様の美しさを損なうことのほうが重罪です」
もっともすぎて返す言葉が出てこない。
気づいた人間もいるだろうが、俺の親衛隊は俺自身を慕う集団ではなく、俺の美しさを慕う集団だ。彼らの行動の指針は常に俺の美しさを保つことである。活動は俺の食事の管理から運動、睡眠に至るまで多岐にわたる。彼らにとって俺の美しさは彼らの活動の成果である。
たとえ俺の意思であっても彼らの美学に反すれば容赦なく切り捨てられる。俺の美しさの前では俺の意思すら反映されない。
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