第1話『コールドスティール1981』

4/35
前へ
/98ページ
次へ
   カーテンを締め切った部屋で望遠鏡を覗き込む女。    薄暗い建物の隙間で煙草をくゆらせる男二人。 カミラM「オルキアの首都を二分するリネージュの壁は、南北冷戦の象徴であり……」    オルキア地図。白いエイルマーク占領地に浮かぶ青い半月型が、上空から見下ろした南リネージュの姿と重なる。    リネージュの壁。    南側。ポーンが佇む通りの先に、壁を背にした国境検問所(チェックポイント・トール)がある。詰め所の建物の横に遮断器付きの道路。    北側。壁に沿ってマンハンターと兵士が、北リネージュの街が広がる方向を向いて立ち並ぶ。 ○南リネージュ・高台の墓地 キャメロン「あの壁は不正義の証だよ」    カミラ、フッと笑う。 カミラ「正義とか、そんな高尚な話かな。確かに北のやり方はまっとうじゃない。けど、これは人間がどれだけ苦しんでるかって話だ」 キャメロン「苦しみ、傷つく人間を君は見ていた」 カミラ「……(溜め息)。わかった。もう見過ごすことはしない」 キャメロン「感謝する。やはり、この世界には英雄が必要だ」    カミラ、反転して歩き始める。男たちと目を合わせず、すれ違う。 カミラ「英雄か」    と丘を下りながら呟く。     
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加