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ミコトは、ただただ空を落ち続けていた。その速度は重力により増し続け、音速などとうに越えていた。しかし1時間経っても、2時間経っても、まだ人間界にたどり着く気配はない。辺りはすっかり暗くなり、夜空が広がっていた。
ミコトは、落下の速度を少しでも緩和するためにあらゆる手を尽くした。彼女の頭上にたゆらう金色の天使の輪――通称"四次元ソケット"からあらゆる物を取り出し、減速を試みた。だが、それらは全て神の呪い――もとい祝いによって、他の物へと成り代わった。
最初にミコトは、翼を授かるためにレッドブ〇ルを取り出した。何度も、何度も懸命に取り出した。だが、それらは手に取った瞬間に全てモン〇ターエナジーへと成り代わった。彼女は最初の1本だけそれを飲み、残りは全て夜空に放った。
次にミコトは、パラシュートを取り出した。何度も、何度も懸命に取り出した。だが、それらは手に取った瞬間に全てフィリピン産のバナナへと成り代わった。彼女は最初の1本だけそれを食べ、残りは全て夜空に放った。
最後にミコトは、ヘリコプターを取り出した。これは流石に脳髄が痛くなる思いだったので、一度だけ取り出した。だが、操縦カンを手に取った瞬間に世田谷区の波平さんへと成り代わった。彼女は頭頂から生える頭髪を一本だけ抜き、残りは夜空に放った。
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