ビューティフルライフ

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ビューティフルライフ

 あるところに派手好きのキリギリスがおりました。キリギリスは路上でギターをかき鳴らし、自由気ままにお金を稼ぐストリートミュージシャンをしながら生活をしていました。  その様子を働き者のアリの親子が眺めていました。 お父さんアリは重そうな鉄くずの乗ったリヤカーを引きながら、息子に苦々しい顔を見せました。 「お前はチャラチャラするんじゃないぞ。あんな生活をしていたらいつか金に困って野垂れ死にすることになるんだからな」 「うんわかったよ。父さん……」  息子はリヤカーを押す自身の右手を見つめました。その手のひらには働き詰めで出きた、沢山のまめがありました。息子は胸のなかで呟きました。仕方がないんだ。僕にはなんの才能もないんだから……。息子は、どこか胸に響く、キリギリスの歌声を羨ましく思いながら、その場を歩き去りました。  それから数年の月日が流れました。安い給料のせいで、栄養のないスープしか食べることのできなかったアリのお父さんは病気で倒れてしまいました。息子は慌てて病院に連れて行きましたが、診察の結果、お父さんは難しい肺の病に犯されていることがわかりました。     
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