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コンコン
「ザミエルです」
「なんじゃ、もう来たのか?」
「はい、ご予定よりお早い就任になるかと」
「よい、入れ」
扉をノックして、そんな会話をしているのを聞いて、やっとこの壮麗の男性の名前が、ザミエルだということが分かった。
いや、多分紹介はされてたんだろうけど、緊張で聞いていなかったんだと思うけど……。
俺は、ザミエルさんが扉をゆっくりと開ける様子を見ていると、悪寒が走った。
こう、父に叱られた時のどうしようもないあの逃げられない威圧感に似ているが、そんなものがしょうもないと思えるほどの雰囲気を感じとった。
手汗はダラダラ。
多分冷や汗もかいてる。
だけど、なんとなく、逃げちゃいけない、という気がした。
自分から動くことを面倒くさがって、ぼっちになってしまった後悔からなのか、俺はこの場で動かないことが出来た。
「ほう、その小僧が」
「はい」
ザミエルさんは、扉の向こうの人へ、膝をついている。
こんな姿勢なんて、ターミネーターか映画でしか見たことのないような姿勢に、思わず俺も同じ姿勢をとった。
「ふむ…………躾はなっているようじゃの」
「事前に調べられることは既に」
紙をめくる音が聞こえる。
なんの話をしているかはさっぱりだけど、きっと俺の採用に関わってくる、という確信から、俺は微動だにしない。
「……………………」
沈黙。
よくマンガで見るセリフの書いてない場面に、自分がいるような感覚がして、怖かった。
みんなが見逃すあのシーンは、当事者からしたら、恐怖の一瞬なんだと。
「よかろう」
そこでやっと気づく。
女の子?
幼い?
どういうことだ?
声の質を気にし始めると尽きない疑問。
「それでは、今後、よろしく頼むぞ」
その言葉と共に、俺は疑問に耐えられず、顔を上げる。
そこにいたのは、銀髪碧眼の、ゴスロリ美少女が、そこにはいた。
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