【What are people thinking】

10/55

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
 確かに現時点で特に困るような事態は起きていない。ただ、先ほどのセールスマンの田中の口車に簡単に乗せられたような気がして、桂井は妙な気恥ずかしさを覚え始めていた。時間が経って徐々に冷静になっていくとより一層。 「馬鹿馬鹿しいな、やっぱり」  桂井は、騙されている、と思い、今まで信じて聞き込んでいた自分を一蹴して、手首に巻いたMRをはずそうとした。 だが、 「読心術、いや、テレパス能力……か」  と呟くと、はずそうとした腕を止めてその場に寝転んだ。何度か寝返りを打った末に、つい先ほど食べた夕食のカレーが残っている事を思い出し、カレーの入った鍋を温め始めた。熱でグツグツと煮込み始めたカレーを見ながら、変に空腹感を感じる自分に違和を覚えた。明日もカレーだな、カレーは二日目が一番美味しい。桂井はそう考えその奇妙な違和感を頭から取り払おうとした。 「そうだ、明日になれば……」  瞬きする事無く、ほぼ沸騰状態になったカレーを睨みながら、桂井はまた独り言を漏らした。                    *  翌朝。     
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加