【What are people thinking】

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 桂井は気持ち速歩きになって鳥越に近づいていった。チラリと横顔が覗ける。間違いない、鳥越だ。そう確信した桂井は固唾を呑んで鳥越の肩に触れてみた。 「よう、鳥越」  と桂井が声をかけた直後から二,三秒経ったぐらいだった。桂井の頭の中にまさしく例のセールスマンが言った如く、走馬灯が走る感覚のようなモノが、鳥越の記憶を介して駆け巡る。いや、むしろ、一瞬にして桂井自身に鳥越の人格が乗り移り、と同時に鳥越のこれまでの人生の軌跡がダイジェストのように、桂井の脳に侵食してきた感触に近い。つまり、鳥越の内面的な部分と経験的な記憶の両面が桂井の脳内に何万倍速にしてダウンロードしてきた。だが、脳内の負担は思った以上に少なく、軽い立ちくらみが起こったぐらいだった。そして、それら一連の出来事はまさしく刹那の出来事。桂井はさすがに初の読心だったのでしばしのショックを受けていたが、すぐに鳥越が、 「おう、桂井」  と声をかけると桂井も容易く我を取り戻し、 「お、おう、鳥越」  と自身では呆然としている内面を感じていたが、鳥越の方は訝る事もなく桂井とともに歩を進めた。  鳥越の方は何も異変が感じられなかったのか?  桂井は思わず鳥越の表情をマジマジと見てみた。 「何だよ朝っぱらから気持ち悪いな。何か俺の顔に付いているのか?」 「あ、いや。何か体に変わった感じとかないか?」     
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