【What are people thinking】

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退社後、早歩き。駅に到着。乗車。桂井、釣り革に掴まりながら満員帰宅電車中、熱気こもる混雑にも関わらずMRについて頭を巡らす。居のある駅にて下車。帰路の途中、コンビニで夕食の確保。購買後、一目散に我がアパートへ。家に到着するとまずはジャージ姿の部屋着になり、夕食のカップラーメンを食べるためのお湯をヤカンで沸かす。そして、次に早速、桂井はMRの取り扱い説明書を手に取る。それまで無下に扱っていた例のセールスマンが渡したチュートリアルやその他の書類を、今度は聖書の一言一句を辿るかのように丁寧に読み始める桂井。 「えーと、MRを使う際の注意事項とかMRの特性的な文章は……大脳においては大脳新皮質と大脳辺縁系という構造的な……こんな小難しい箇所じゃないな。他のページ、他のページっと……えーと、記憶には言語や文字で現せる思弁的かつ思考力で処理する『陳述記憶』。実際に身体を動かし自分自身の肉体に覚えさせる、所謂、体で覚える『手続き記憶』というものがあります。前者はさらに意味記憶や出来事記憶などに分かれますが、おおむねの記憶は時間が経過するとともに忘却していきます。後者は一度覚えると、生涯忘れる事はない……って、そんな事知りたいわけじゃない。もっと易しい説明で……ん? 短期記憶の一つに『ワーキング・メモリー』というものがあって、MRで取り込まれる読心した相手方の人格や記憶はワーキング・メモリーと同じ扱いになり、情報量の多少に関わらず短時間で忘れるシステムになっています。これはMRによる情報過多状態での、M     
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