【What are people thinking】

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R使用者自身の脳の記憶及び情報処理能力の負担を軽減。また、精神的な問題として、脳内における記憶や情報の許容範囲の閾値(いきち)のオーバーをMRが判断し抑制する事により、脳の破綻や人格崩壊の恐れ(例えばMRを使用した結果、健忘の懸念やウツ病を罹患するなどの心的故障の蓋然性の危惧)を回避できる、つまり、オートマチックなリスクヘッジ機能が搭載されているものだと理解して下さい。む、脳の破綻やら人格崩壊とやらは何か不気味なワードだが……ん? 何なに……ただ、ワーキング・メモリーと一つ違うのはMRで取り込んだ相手方の情報の全てが自分の脳内から消去されるわけはなく、自らの脳の趣向に適った、つまり、自分好みの相手方の情報は、しばらく自身の記憶に残ります。ワーキング・メモリーは一つの仕事に対して、その仕事をこなしてしまった後、その仕事に関連した情報は忘れてしまいますが、MRのそれは相手方から得た情報を、自ら の脳がそれらは自分にとって有益か無益かを自動的に精査かつ選別し、自分にとって有益、つまり、自分が関心のある情報は残してくれます。その作業は無意識下で行われているので自覚はされません。けれども、自分の脳によって積年に及び形成されてきた、言い方を変えれば長年に培ってきた(MRを使用した側の)本人の性格や趣向などに対して従順に依拠、もしくは考慮してオートマチックにMRは機能しているので、その読心に対する利便性や安全性は信頼をもって構いません……うーむ、何かこの辺の説明書きに、僕が知りたい事っぽいのが載っている気がするな」  長々とMRの取り扱い説明書について、ページを繰りながら一人言を連ねる桂井。しかし、しっかりと読解しているというと言えばそうではなく、せいぜい文章の雰囲気をつかんでいる程度の状態。そのため早くも集中力を欠き、ヤカンが僅かな蒸気音を発するぐらいにも関わらず、お湯の沸騰に気づき、早急にカップラーメンにその沸騰したお湯を注ぐ次第。     
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