【What are people thinking】

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 自分にとって有用な情報だけしばらく頭に残って、無用な情報はすぐに自分の記憶から消えていくって事だよな。つまりは相手方の自分にとって興味のある話っていうか情報やら記憶やらは、僕自身の頭の中でしばらく覚えている。自分にとって何も面白くない情報は直ぐに忘れるって事か。確かに鳥越を読心した所で奴の人格や過去に何の面白味もなかったし、特別に意外性があった情報なんてのもなかったからなあ。最近お熱のキャバ嬢とのチョメチョメやら、趣味で自分のブログであげてるラーメン屋通いの旨いランキングとか、本当、どうにも僕には関心のない内容ばかりだった。奴の過去にしても全然平々凡々で物珍しい出来事なんかなかったしなあ。せいぜい小学校の時給食中に豪快にゲロ吐いた事ぐらいか。  元々、鳥越という人間自体に桂井は興味がなかったので、その読心の成果も桂井自身の関心をひくという意味では大して実にはならなかった。だが、読心の実験が成功したのは結果として現れた。確実に桂井の脳裏に焼き付いた。  ま、MRのテストとしては無駄じゃなかったか。  桂井はMRから目を逸らし、両腕を手枕にしてその場に寝転んだ。 「さて、と」  明日からどうしようかな。いや、明日からが本番だ。どいつにMRを試してみるか……一応は五人ぐらいが一日の読心の上限としては適正人数らしいからな。やたらめったら読心を試して脳に変な負担をかけたくない。やはり会社の同僚とかの方が無難かな。全くの他人じゃ選別のキリがないしな。だけどわけの分からない他人の方が面白い過去とか持っていそうだし。とりあえずは誰に試すか悩むなあ。 「あ、そうだ」  軽く額を叩いて一人言を発した桂井。そして、上半身をムクリと起こし、 「仁科さんには……使ってみたいな」  とまた一言。     
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