【What are people thinking】

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無意味にヤル気が横溢している桂井ではあるが、それは当然仕事に対しての意欲ではない。MR使用の好奇心からの気力である。桂井は通勤中から社内でMRを使う人間を脳内で吟味している。 やはり会社の中でも近しい奴を試した方が良いかな。いや、逆にあまり知らない人間の方が面白いかも。まあ、別に社内の人間の事を知って、コミュニケーションを円滑にしようとは思っている訳ではないんで、単純にこいつはどんな人間なんだ的な変わり者系の奴の頭を覗く方が楽しいかな。でも、僕の会社にはそんな一見してエキセントリックな奴は見当たらないよなあ。一応は優良な中小企業だから、ほとんどマトモな新卒始入社揃いの社員だし。いや、でも普通っぽい人間ほど腹の底では何を考えているか分からないしな。うーん、チョイスが難しい。それとも上司を狙って強請(ゆすり)のネタでも握るってのもあるか。いやいや、それは現実的にヤバいか。あくまで表には出さず個人的に楽しむ方が良い。ただイザって時の切り札の時には役に立てよう。ま、そのイザという機会がまずないだろうけど。兎に角、やはり迷うなあ。やはり実際、会社に行ってからその場のノリで MRを使って遊んでみるか。思いつくまま、気の向くままで。 桂井は左手首に巻いているMRを一瞥すると、やや駆け足気味に歩を進めた。 「おはようございます」 「おいっす」 「おはよっす」 「おはよう」     
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