【What are people thinking】

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「今日もよろしくお願いします」 桂井は他の社員より一足早く出社。 徒然ない様で椅子に座りながら、デスクに肩肘ついて横を通り過ぎていく出社してくる社員の挨拶に軽く相槌で返す。一見、虚ろな目でいかにも眠そうな感じで桂井は朝の挨拶に接しているが、胸中では目の前を横切る社員からMRを使う相手を選別していた。自然と横目で瞥見している桂井の眼底に鋭意が込められていく。勿論、その桂井の真意及び行動に気づく周りの者はいないが。 すれ違う社員は主に同じ部署の社員ばかり。気心は多少知っている連中ばかりなので、逆にあまり桂井の関心は惹かなかった。 そんな折、やや桂井から座席は離れているが、仁科が出社してきて遠目でその姿を見ていた桂井と目が合い、仁科が軽く会釈をした。桂井も反射的に頷く。自然な表情を装いながら。挨拶した位置は離れていたけども、桂井の鼻にはいつもの芳しい仁科特有のフレグランスの香りが掠った。一時、悦に浸る桂井。仁科は長い髪を軽く掻き分けて自席に座った。そして、ふくよかな胸でありながら、第一ボタンまでしっかりはめているブラウスの襟首を立て直して、パステル・カラーのネイルをチェックしてから、仁科はパソコンを起動させる。     
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