【What are people thinking】

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仁科さんは相変わらず、愛らしくてカワイイよなあ。 オフィスに入室してからの仁科の一連の自然な動きにさえ仁科に好意を感じる桂井にとって、やはり気になるのは隣の経理の部署で働く仁科亜紗美であった。 部署が違うとはいえ特にパーティションもなく、セクトを隔てるものもないので容易に声はかけられる状況にある。それこそトイレに行く途中、軽い感じでお菓子をおすそ分けする行為がてら談話する事など可能だ。社風自体、皆が疲れてきたら雑談をしても特に咎めるような事はないフランクかつ若手が多い環境なので、堅苦しい雰囲気はなくその点は桂井も気に入っていた。 だからこそ仁科亜紗美と何気ないコンタクトをとるなど難なき事柄、なのであるが桂井はやはりこればかりは稚拙なナイーブさに押され踏ん切りがつかない。 MRを使って愛しの仁科さんの心を覗くのは邪道だ。 もはや桂井にとってその気持ちは純化した倫理的な良心というよりも、一種の屈折した意地やら決心にも似てきていた。だが、その読心を望んでいるのも事実。欲望(リビドー)は生得的にあるモラルよりも、意固地となった精神に対しての方が攻撃をしやすく、また気張っている心の方が我慢して耐えているだけなので脆い。 煩悩に打ち勝つ。     
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