【What are people thinking】

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「今の世の中、人を見た目だけで判断するのは困難だと思いませんか? アパートやマンションの住人でいつも通りすがり挨拶をしている仲。相手も外見は好青年で社交的。いたって普通の若者の装いをしているのに、その実、部屋の中では少女を監禁していたなんて事件も、ままありますし。世間では人当たりの良い理想の父親像のようなご亭主が、家では内弁慶にしてDV常習者だった、とか。さらには察知しがたい暴力行為や犯罪は若年化も進んでいて、いかにも優等生然とした生徒や学生が、突然、同級生を何の躊躇いもなくナイフで刺し殺したり、というケースも最近では増えています。それにこの辺りでも車場荒らしの激増、挙句の果ては三件ぐらいでしたっけ、若い女性らがバラバラ殺人の被害に遭ったりしていて、遺体の一部はまだ見つからず、夜道を歩くのもままならない。そういえば近くの河川敷でもコンクリ詰めのリンチ殺人が起こったりしましたね。この事件の犯人は高校生グループですよ。被害者は同世代のフリーターの友人。犯行の動機は小さな諍いから発展して、その流れから意図せずして殺してしまった。つまりは、何となくそうなった、ということ。群集心理の脅威による殺人事件への発展の典型ですよ。そうですよ。単純に人を殺してみたかったから、なんて理由がまかり通るのも今日の殺人事件、いや、その他諸々の軽犯罪から重大事件が不明瞭化してきてそれこそ、隣は何をする人ぞ、と隣人にまで懐疑の念を抱いてしまう。善良そうな一般市民が冷酷な殺人鬼だった、なんていうのもドラマや映画だけの話じゃなくなってきています。そんな息苦しく恐ろしい社会だからこそ、その人の外見や性格の皮相的な部分だけでなく、その人の本来の中身を、その人の過去や真実を見定めないと不安じゃないですか? 誰しも他人をそう簡単に信用するのが難儀な現代だからこそ」     
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