【What are people thinking】

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「まあ、そういう商談の展開にはなるだろうけど、正直、こっちはもう納期の期日に譲歩出来ないんだよね。既にギリのケツかっちんのスケジュールでやってるんで。でも、こっちとしては工藤テクノクラート側の方がかなりの時間の猶予をもって仕事をしているのは知っている。だから逆に何とか頼み込んで平身低頭すれば納期引き延ばし、とまでは言わないけど、とりあえず現状維持の納期日までで勘弁してってな交渉の余地はあるってこと」 「なるほど」 「だからさ、その交渉の緩衝材として桂井ちゃんについて来て欲しいのよ」 「何すか、それ。だったら僕なんかより、女子社員をお供に連れて行った方が和やかな雰囲気になりますよ。例えば……」  そこまで言って仁科亜紗美の名前を挙げようとしたが、工藤社長に変に気に入れられて愛人にされるかも知れない、という杞憂に近い思いが桂井の脳裏に走り、 「受付の冴木瑞穂(さえきみずほ)さんとか」  冴木瑞穂。桂井の会社では典型的なマドンナ的存在。目鼻立ちはくっきりして、ツヤのあるサラサラ髪のロング・ヘアのビジュアルにして、痩身のクール・ビューティ然とした実に分かりやすい男好きする美人タイプ。その容姿に愛想の良さも加わり会社の窓口である受付を任されている。     
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