【What are people thinking】

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仁科も可愛い女性社員の範疇にはあるのだが、男性社員側からすると冴木がダントツで社内の注視を浴びている。それは偏(ひとえ)に性的魅力の観点から、自分の魅力を発散している。それでいて清純派の匂いもまとわりついている。つまり、色気と華もあって、さらには奥ゆかしさを保ちつつ家庭的な女性という、異性側にとっては美味しい所取りの万人受けするキャラクターを備えているのが、冴木瑞穂その人であった。 桂井も冴木に全く好意を持っていなかったといえば嘘になるが、やはり桂井の本命は仁科亜紗美にあり、仁科を守る、という勝手な考えのもと冴木を工藤との交渉の同席に推挙した。 「そう、本来なら綺麗どころの女子社員をねじ込んでお茶を濁すんだけど、工藤さんってさ、昔気質の職人肌ってヤツなのかな? 女が男の職場にいるのはけしからん的な、古いタイプの仕事人なんだよね。今時じゃ男女共同参画社会の否定の何物でもないんだけど、そういう人だから逆に機嫌を損ねそうなんだよ」  立ち姿、面倒臭そうに肩を回しながら菅谷は言う。 桂井は目を細めて鼻で息を出すと、 「僕が一緒にいた所で、ゆるキャラ扱いになるとは思いませんがね」 「いや、俺と工藤社長の間のクッションになってよ、桂井ちゃん。俺がビビりなのは知ってるだろ。工藤さんの昭和の頑固オヤジ的な迫力には毎回ブルっちゃっているんだから」 「僕のイメージでは気難しい英国紳士風の厄介オヤジって感じですけど。意外とダンディな着こなししてるじゃないですか」 「つーか、そんな事はどうでもイイっての。兎に角、頼むよ、桂井先生」 「でもなあ、僕だって一緒にいて気まずいし、それに……」     
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