【What are people thinking】

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 とそう喋る桂井に一つのアイディアが浮かんだ。そうだ、一つMRを使ってみてはどうかな? と。すると桂井は軽く口角を上げ、 「仕方ないっすね。じゃあ、一緒にお供しますよ、菅谷さん。その代わり今度一杯奢って下さいよ」 「おお、助かるよ、桂井ちゃん!」  菅谷も桂井の快諾に明るい表情で応える。一方、桂井は含み笑顔をしながら、MRに視線を落としていた。 「工藤さんがお見えになりました」  昼休みも終わってそぞろ、受付の冴木が菅谷のもとにやって来て、そう告げた。桂井はキャット・ウォークの上をモデルのように進んできた冴木を横目で見ながら、相変わらず艶っぽいオーラを出しているな、とよからぬ妄想をしていた。二十デニールの薄いストッキングを履きこなす健脚、細身の身体にブラウスを纏い、その華奢な容姿に似合わない胸のふくらみ、それらに自然と目が移り、桂井は思わず凝視してしまっていた。  その時、菅谷が溜め息混じりに桂井に声を掛けてきた。 「んじゃ、行こうぜ、桂井ちゃん」 「相変わらず待合時間の十分前にご登場ですか。例の如く几帳面な社長様だ」  桂井と菅谷は冴木に促されるまま、工藤が待機している小会議室へと案内されていった。菅谷はうなだれた様子で愚痴をこぼしながら歩く。     
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