【What are people thinking】

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 と冴木が一言添えるとドアを開け、肩を落とし気味の菅谷と桂井が入室し、冴木は踵を返して給湯室へと向かった。ドアが締まると目前のソファに恰幅の良い、光沢のあるグレーのスーツを着た白髪の男の威容な後ろ姿が、菅谷と桂井の目に映った。  菅谷はテーブルを介して工藤の対面に周り、 「どうも、今日はわざわざご足労願いまして、恐縮です」 「いや、気にせんでくれたまえ」 「それでは失礼いたします」  と菅谷は返し、桂井は軽く一礼して、腰を低くしながらソファに着席した。眼前の工藤は背筋を伸ばした姿勢で、年代物の毛筆のような髭を備えた、眉間に皺を寄せた強面にて、バリトンばりの低音ボイス。ダブルのスーツを肩幅のある体躯に馴染ませ、ワイシャツは第一ボタンまで閉じて、ネクタイはタイピンをしっかりと嵌めて締めている。新入社員の面接以上に服装は凛々しく、それでいて厳格な態度で振る舞っている工藤。  どうしていつも迫力満点なオーラで来るかな。  分かってはいたが、内心、桂井は工藤の威圧感のある容姿にたじろぐ。その間に菅谷は話を進めていた。 「それにしても最近は暑からず寒からずの好天続きで、仕事もし易い環境になって助かりますね」 「うむ」     
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