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「いやあ、何と言いますか、そうは言っても物事というのは予定通りにはならないもので、仕事というのはまるで経済のように流動化するので、なかなか難しいものです、はい。ですので業者間の緻密な連携と協力がキモで、特に実に非常に重要に問答無用に必須な事と私としては理解しております」
「うむ、そうだね」
あからさまに緊張して本題を持ち出せない菅谷は、慣れない丁寧口調でたどたどしく喋りながら、額にジワリと汗して慎重に工藤に問いかける。だが、そんな菅谷の及び腰を無視して、
「そういう事だ、菅谷君。よく分かっている。話が早い。仕事というのは常に予定通り順調に運ぶものではない。会社同士、お互いの事情を鑑みてこそ成り立つ。そこで今回は私の方の都合で悪いのだが、そちらの納期を早めてほしい」
と工藤がドスの効いた声音でストレートに今回の議題のメイン・テーマを菅谷に返した。それを吐いた工藤の目線は肉食獣のように厳しく、怖い。菅谷の目が明らかに泳ぎ、桂井の方に幾度も首を向けて、
「はは、なるほど。そうですね……」
と言いながら苦笑する。
桂井は一つ深呼吸をする。
まあ、ちょっとベタなヤリ方だけど。
そう桂井は胸襟に織り交ぜながら、
「あ、社長。肩にゴミが付いてますよ」
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