【What are people thinking】

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「は、はあ……いや、いえ、全くおっしゃる通りで、グゥの音も出ません、工藤社長の仕事の流儀には」 「そうかね? いや、そうだろう」  満悦そうな工藤。結局、菅谷の言葉は提灯持ちな意見に転じ、交渉の話の流れは平行線で具体的な進展はなく変化なし。変わっていくのは菅谷の発汗量と、引きつった笑顔の口角の上がり具合のみ。 そして、しばしの沈黙が訪れた。その間隙を縫うように桂井が口を開く。 「あれ、そういえばさっき社長の肩に付いたゴミを取りに近づいた時に気づいたんですけど、社長が今日締めているネクタイは、お見受けしたところ、フェラガモのネクタイじゃありませんか?」 「ほう、よく分かったね。その通りだよ」 「いや、そのネクタイってスマイズ×スマイルのゴルフウェアとも相性が良くて、もしかしたらゴルフをなさっているのかと」  桂井がそのように話を切り出すと、工藤は半身を乗り出して桂井を注視し、 「そうなんだよ。君、よく知っているね。このネクタイはビジネスの時はもちろん、ゴルフをする際にもポロシャツでなくワイシャツのウェアとも自然とフィットするんだよ。若いのに君はゴルフをするのかね?」  と興味津々に桂井に食いついて来た。桂井はここぞとばかりに畳み掛けるように会話を弾ませた。     
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