【What are people thinking】

42/55
前へ
/55ページ
次へ
 まあ、特に問題を起こしたような記憶はないな、と桂井はとりあえず難事なく切り抜けたという事で結論づけた。  菅谷さんも、昨日は楽しかったな、って言って機嫌が良かったしな。  再度、昨晩の飲みは安泰に終わったと確認し、桂井は仕事を続けた。そして、昼休みになる頃には二日酔いも消えて、体調も良好になっていた。 「なあ、昼飯に行こうぜ、桂井」 「ん? ああ」  同僚から桂井はそう声を掛けられた。桂井は、もう昼休憩の時間か、と思いながら反射的に腕時計をはめていると感じていた左手首に目を向けた。 「あ、そうか」  左手首にはめているのはMR。桂井は勘違いしたと思いつつ、今日がMRの試用期間の最終日である事に気づいた。  今までMRを試した人間は二人、か。  MRを所持して三日間、思ったより好き勝手にMRをランダムに乱用してなかった事に、桂井は自分自身に対して意外性をもった。だが、それは桂井の深層心理的な部分で、MRの無駄な使用を防いでいた所以もある。桂井もその点は薄々感じていた。  MRを使い他人の記憶や過去や人格をインプットする事が、予想以上に自分に負担がかかるということ。     
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加