【What are people thinking】

44/55
前へ
/55ページ
次へ
 MRを使わずして今日は終えるか……試用期間の最終日だが、結局の所、MRは僕にとって有用なモノではないという理屈に至るのか? 利用価値やその性能の良さは頭の上では理解できても、どうにも拭えない違和感か不快感の類い。人の頭の中を覗き込む事がどれだけ自分にとっての内省となるか……そこまでは配慮が出来なかったな。  予想外の、想定外の心情。MRはもっと気軽に使えるモノだと考えていた桂井にとっては意外な結果だった。  だが、MRの使用を控える思いの一方で、まだそのMRの能力を試したい衝動には駆られていた。 仁科亜紗美の記憶、過去、人格、そして、自分に対する想いを知るというために。 MRを使って仁科の心像を覗き込む事に、いささかの負の思いはある。二の足を踏む。だが、桂井はそれ以上に仁科の自分に対する気持ちを知りたかった。リスクの大きすぎる片想いと、自分の中では位置づけしていたが、そんな理性とは関係なく、情緒的な部分が桂井の中では勝り、MRを付けた左手で仁科の肩に触れたい、という余勢に押される。 しかし、仁科の本心を覗き込む事自体に恐怖も桂井は覚える。もし、僕の事を嫌いだったらどうしよう? という単純な自意識過剰感情から来る幽(かす)かさ。傷心のダメージの失墜感。そんな中で保身、というか自らが受ける衝撃に対する保険というか、そこから桂井はあざとい妙案が浮かんだ。 まずは冴木瑞穂に試してみるか。     
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加