【What are people thinking】

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「簡単です。MRを付けたまま人に触れれば良いだけです。直接に皮膚や肌、というわけでなく服の上からでも大丈夫です。さすがにガラス伝いや壁伝いでは読心できませんが、普通に二,三秒ぐらい相手に触れれば勝手に相手のデータ、つまり、相手の記憶や過去が自分の脳にそれこそ走馬灯のように流れてきます」 「……なるほど」 「それではとりあえず三日間お貸ししましょうか。お試し期間として。三日後はちょうど休日ですし。今から付けたので明日の朝にはMRの機能が作動し始めるはずです。その後に暫く試してみて下さい。それでお気に召されたらご購入という流れではどうでしょうか?」 「そう……ですね」  口ごもった唸り声で返す桂井。その顔はあからさまに不審気。それに察してか田中は空気を濁すため口を開いた。 「ちょっとシステムの説明をさせてもらいますね。人間は細胞の内と外の電位差から体中に電気が流れているんですよ。それは脳も同じです。その脳の神経経路の仕組みなんですが、シナプスという軸索が電気信号を神経伝達物質に変換してニューロンと呼ばれる神経細胞に情報を伝えるんです。その電気信号が大脳辺縁系の一部である海馬体という記憶に関わる器官を通しMRへと流れていって……」 「あ、はい、もう分かりました。明日にも試してみるんで」  難解な用語を駆使して滔々と話す田中に辟易して桂井はすぐに口を挟んで遮った。田中は十分に解説できなかった事に不満だったのか、一瞬、表情を曇らせたが、     
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