別れと出会い

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別れと出会い

僕は小さい頃から君が好きだった。 笑った顔、怒った顔、悩んでる顔、悲しんでる顔、真面目な顔。どれも君らしくて、好きだった。 けど、君はもういない。 僕は桜の木の下に立った。 今日は大学の卒業式だった。四月からは社会人だ。 学生最後の日に僕はここに来たかった。君と約束をしたここへ。 「大きくなったら棗のお嫁さんになるの」 笑顔でそう告げた君はあの時まだ幼かった。かく言う僕も彼女と同い年で幼かった。だからなのか僕は彼女の宣言にしっかりと頷いた。 「僕のお嫁さんは咲良だよ」 小学生の頃だ。そんな約束をしたのは。 あれから何年経っただろう。君は僕の隣にいない。 高校の時、小学生をかばって車に跳ねられた君は以前、大切な人を守れる様な看護師になりたいと言っていた。 けれど君はその夢を叶えることができなくなった。 何日も泣いた。君を失って。 今だって君を思い出す度に胸が痛くなる。けれど、僕は君のために前に進まなければいけないと思う。 どんなに辛くても、悲しくても。 僕は目の前に佇む桜の木を撫でた。 「今まで、ありがとう」 呟き微笑む。 そして僕は背を向けた。 さようなら、桜の木。 咲良との思い出がたくさん詰まった大切な場所。 僕はもうここへ戻ることはないだろう。 新しい生活、新しい出会い、新しい人生が待っている。 別れは悲しいものではない。新たな出会いのためにある大切な出来事だ。
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