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「でも、いくら少女漫画で勉強しても、何も分からなかった。男がかっこいいこと言って女の子が喜んでるシーンもいくつも見た。でも駄目なんだ。だってそんなの、漫画の女の子が言われて嬉しい言葉であって、佐々木さんが喜ぶ言葉じゃないから」
はっとして目の前の深沢くんを見ると、深沢くんは少し眉を下げて、自信がなさそうに、けれどはっきりとした声音で言う。
「だから佐々木さんが嬉しいって思うこと、教えてほしい。佐々木さんが好きなもの、食べ物とか飲み物とか、テレビとか音楽とか、何でもいい。どんな些細なことでも、佐々木さんのことが知りたいんだ!」
「深沢、くん」
こんなことを男の子に言われて、ときめかない女の子なんているのだろうか。他の子と同じじゃなくて、“私”のことを知りたいと思ってもらえるだなんて、とても嬉しいことじゃないのかな。
ねえ、深沢くん。気付いてる? あなたは今まさに、私が喜ぶことを言ってくれたんだよ?
それなのに深沢くんは今もまだ同じように不安そうな目で私を見てる。どうしてそんな不安そうな顔をするの? いつもあんまり人と話さないから私の反応が怖いの?
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