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俺の家には奇妙な同居人がいる。
そいつは俺が物心ついたころから家の隅に座っていた。俺を同じ顔をしたそいつはいつもじっと部屋の隅から俺を見つめていた。
小さな子供の頃はそいつとは友達だったと思う。何度も会話もしたし一緒に遊んだりもした。
しかし、そいつは俺以外には見えていないと気が付いたのはまだ4歳か5歳の頃だったと思う。母親がそいつと遊んでいる俺を見て「タケル誰と話しているの?」と言ったのだ。
俺はその時の母親の脅えた目を忘れられない。そのことがきっかけでそいつが自分以外には見えていないような態度を取っていることに気が付いた。それから俺もそいつが見えないようにふるまうことにした。
何度かそいつは俺に話しかけてきたが、無視をし続けるうちにそいつも俺に話しかけてくることはなくなった。ただ部屋の隅でじっとこちらを見つめるようになった。
小学校になるころにはそいつを無視する生活にも慣れてきたが、恐ろしかったのはそいつも俺と同じように成長しているということだ。ぼろぼろで薄汚れた服を着ながら俺とそっくりな顔で俺を見続けていた。
ドッペルゲンガーという存在を知ったのは中学生になってからだった。自分そっくりの人間が自分の関係にある場所に現れると言う幻覚の一種だと言う。そいつ自身は周囲の人間と会話しないということも共通していた。
しかし、そいつは忽然と消えたりはしない。いつも家のどこかの部屋の隅でじっと座っているのだ。無表情でずっとこっちをみている。
ドッペルゲンガーは脳に腫瘍ができていると見る幻覚だと言う話もあったので、両親に頼み込んで検査もしてもらったが特に異常はなかった。
ある時、学校の先生に理不尽に怒られたことがあった。自分が悪くないのに怒られたことが腹立たしく苛ついていた俺は、家に帰った時にじっとこっちを見てくるそいつを思い切り蹴り飛ばした。そいつは無表情のまま床に転がってわずかな呻き声をもらすだけだった。
想像以上にスカッとした。心に溜まっていた濁った気持ちが体から吐き出されたような気持だった。そして、わずかばかりの嗜虐的な快感が俺に優越感を抱かせた。
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