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けれど2カ月前、横川祐一の事件に関わり、死の間際の男の苦痛と無念を取り込んで以来、PTSDに似た症状がずっと春樹を蝕み、眠れぬ夜が続いた。
最初の数週間はろくに食事も喉を通らなかった。
数日前、夏風邪のせいか、季節外れの高熱を出してしまってからは流石に降参し、この内科クリニックを訪れたのだったが……。
早くもこめかみを伝う汗を感じながら、春樹は自分の蒼白い腕に視線を下ろす。
半袖シャツから覗く内肘の、血止めの脱脂綿の盛り上がりさえ恐ろしく感じ、引きちぎるように剥ぎ取った。
『ちょっと我慢してくださいね』
医療用手袋をしていない方の手で、春樹の腕を押さえ、点滴の針を刺した30代後半の優しい看護師の声がリアルによみがえる。
そして同時に鮮烈に蘇ってくるのは、彼女の胸の奥にこびり付いた、深い悲しみだった。
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