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この桜、かつてはもっと濃い紅色であった気がいたします。
あなたは降りしきる花びらに隠れて女を引き寄せ、愛を嘯き、恋の戯れで狂わせ、やがて飽いて捨て置く。
艶めかしく微笑むあなたに手を差し伸べられたなら、女は女であるかぎり拒むことなどかないませぬ。
哀れな女どもの屍は累々と……それを目の当たりにしていながら、此度ばかりは違うはずと皆信じてしまうのでしょう。
幼女であったこの身が、あなたとあなたの織り成す恋の戯れによって少女となり、血を流す生身の女として産み落とされたのは何故か……我が意思であったのか、何らかの摂理によってなのか、今に至ってもまだわからぬのです。
ただ、我が身があなたの子を孕んだ時から、この桜は色褪せて白くなったように思います。
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