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白い雪のようなメス猫を、司はスノーと名付けた。
ペースト状にした餌をスポイトで流し込む、同僚に付き合いが悪いと言われても仕事が終わると直ぐに帰った。まるで幼稚園に子供を迎えに行くお母さんのように。
そんな日々が続き、スノーが来て一週間が経った、いつも通り司が帰ると、ダンボールの中にスノーがいない。慌てて辺りを見ると、いつも司が座っている座椅子の上で丸くなっていた。
「お前、そこに行きたかったのか?」
グシャグシャと頭を撫でたかったが、ゆっくりと撫でた。
スノーは驚異的な回復力だった、真っ直ぐは歩けなかったが、ウエットフードを置いてやると、一歩一歩自力で歩き、美味しそうに食べた。
ドライフードまで食べるようになったのは更に一週間経った時だった。司が後ろから抱きしめようと近づくと、スノーはピョンと飛び退き部屋を歩く、司が近づくと同じ距離を保つように逃げ回るまでに回復した。
母親と愛犬を同時に亡くした日からこの感じは初めてだった。自然と笑顔が溢れる、懐かしい暖かさだった。そんな生活が三ヵ月も続くと、スノーと司は家族同然になっていた。あの雨の夜が嘘の様に思える程に――
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