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スノーの鳴き声は日に日に大きくなっていた。ペット禁止のアパートでこれ以上こいつと生活するのは無理だった。一階に住む司は、玄関のドアを開けた。
「元気でな、スノー......」
鼻の奥がツンと痛くなった。勢いよく外に飛び出たスノーはこっちを見る。その目は「ありがとう」と言ってるようで、一筋の涙が司の頬を伝った。壁に飛び乗りスノーは名残を惜しむ様にもう一度振り返る。「ナオーン」と鳴くと、向こう側に飛び降りた。
そのまま、スノーが帰って来ることは無かった――
***
あれからスノーとは会っていない。「あいつの生命力ならどこかで元気にしているだろう」と、思うだけで表情が緩む。
入社して五年。仕事も任されるようになり、今年から新人とチームを組む事になった。
顔を引き締め朝礼へ向かう、初々しい新入社員が前に立っている。真新しいリクルートスーツを着た雪のような真っ白な肌に、黒いショートカットの女性、どこか見覚えがあるようにも思えた。
「本日からうちの部署に配属された白井さんだ、東堂君とチームを組んでもらう事になった」
「白井ユキです、司さん、またよろしくお願いしますね」
了
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