0人が本棚に入れています
本棚に追加
予め部長が預かった写真はコンテストで審査された。私の写真は佳作だった。先輩は最優秀賞を受賞した。賞金と楯を貰った先輩は、新聞社の記者の質問を受けてこの日の夕刊や翌日の朝刊に載った。テレビのニュースにも流された。
将来の夢を聞かされた先輩は、「とりあえず大学を卒業して報道の仕事に就く」と答えた。この時初めて先輩の胸のうちを聞かされた。
3年生である先輩は他の同級生と共に受験モードに入って部室には来なくなった。もっと教えて欲しい事があったのに、今となっては遅い。私たちよりも先に帰ってしまう3年生をつかまえるには、3年生の教室の前で待ち伏せするしかない。だけど、女子生徒たちが怖くて実行できない。
時は瞬く間に過ぎていく。とうとう卒業式の日が来た。私は、これが最後だと思って先輩に告白したら「僕が通う高校・大学へ君が来たらね」と答えてその場を去ってしまった。私は、呆然として帰宅した。
母にその事を尋ねると「自分と同じレベルなのか試されてるみたいね」と返ってきた。先輩は地元では有名な進学校へ進学した。写真の腕だけでなく頭も良い先輩に釣り合うのか私にはわからない。あと2年猶予期間がある。私は、写真の腕や勉強に力を入れることにした。
最初のコメントを投稿しよう!