4/6
前へ
/6ページ
次へ
少年の手が少女の膝に触れた時、少女は激しいめまいを起した。 ―― ああ、胸が張り裂けたのかも…―― などと思いながら、少し傾いた陽射しをバックにギリシア彫刻のような少年の顔が 少女の目に飛び込んだ。 少女のドキドキは止まっていた。 だが、「キュンッ!」と突き刺さったものがある。 ―― きっとキューピットの矢だわ… ―― と思い、少女は妙に冷静だった。 そして今こそ抱きつこうと思った途端に、またドキドキが襲ってきたのだ。 どうしても少年に抱きつけなかった。 腕が上がらない、動けない… だが少女は、胸のときめきを押さえ込み、今の気持ちを言葉に込めた。 「…あなたって、私のナイト様だわっ!」 少年は胸を締め付けられる想いがした。 少年の姉に聞いたことがある。 胸がドキドキするんじゃなくてキュンキュンするという言葉。 今がまさにその時なのだろうと少年は考え、さらに決意した。 その瞬間、「雛っ!!」と少女の背後から声が聞こえ、 少年は口から心臓が飛び出る想いを始めて体験した。 少女はさらにドキドキが激しくなった。 だがこのドキドキは叱られてしまうという罪悪感のドキドキだ。 少年の顔は恐怖で固まっていた。 若い女性のその顔は少年を睨み付けていたのだ。 「さあ、行くわよ」     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加