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少年の手が少女の膝に触れた時、少女は激しいめまいを起した。
―― ああ、胸が張り裂けたのかも…――
などと思いながら、少し傾いた陽射しをバックにギリシア彫刻のような少年の顔が
少女の目に飛び込んだ。
少女のドキドキは止まっていた。
だが、「キュンッ!」と突き刺さったものがある。
―― きっとキューピットの矢だわ… ――
と思い、少女は妙に冷静だった。
そして今こそ抱きつこうと思った途端に、またドキドキが襲ってきたのだ。
どうしても少年に抱きつけなかった。
腕が上がらない、動けない…
だが少女は、胸のときめきを押さえ込み、今の気持ちを言葉に込めた。
「…あなたって、私のナイト様だわっ!」
少年は胸を締め付けられる想いがした。
少年の姉に聞いたことがある。
胸がドキドキするんじゃなくてキュンキュンするという言葉。
今がまさにその時なのだろうと少年は考え、さらに決意した。
その瞬間、「雛っ!!」と少女の背後から声が聞こえ、
少年は口から心臓が飛び出る想いを始めて体験した。
少女はさらにドキドキが激しくなった。
だがこのドキドキは叱られてしまうという罪悪感のドキドキだ。
少年の顔は恐怖で固まっていた。
若い女性のその顔は少年を睨み付けていたのだ。
「さあ、行くわよ」
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