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女性はそれだけを雛に言って、手を取り歩き始めた。
… … … … …
「きっとあれがオレにとっての最初で最大の恐怖だったと思うな…」
源次郎は我が子である一才になったばかりの大樹を肩車して、雛にいった。
「あの時は私も怖かったわよ。
いつもの数倍だったわ、あの剣幕…」
「でも婆さんのことが大好きだったんだな。
何か理由あるのか?
普通、あまり厳しいと敬遠すると思うんだけどなあー…」
「…きっとね、安心感。
お婆ちゃんのそばにいると、とっても安心したの。
でも源ちゃんはさらに安心できるわ。
…あら、腕、どうしたの?」
雛が言うと、源次郎は自分の右腕を見た。
何もなっていないのだが、肘がかすかに痛んだ。
よくよく見ると、かすり傷がついていた。
「ああ、ピラミッドを作った時に岩で擦った。
絆創膏、あったかなぁー…」
源次郎は戸棚を確認して、奥の方にその存在を発見した。
「私が貼るわ」
雛が源次郎から絆創膏を受け取った瞬間、
25年前のキュンキュンがいきなり蘇った。
「どうしたんだ、眩暈か?」
源次郎は心配そうにして雛の顔を覗き込んだ。
雛は源次郎にゆっくりと笑顔を向けた。
「ううん、後遺症よっ!」
雛は笑みを浮かべ源次郎に絆創膏を貼った。
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