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序章だけど一旦完結
『野鳥などにエサをやらないでください』
満開の桜の木の脇に、この立て札があった。
ひとりの60代ほどのおじさんが、立て札に背を向けて、
桜の木を背にして鳩やスズメにパンくずを与えていた。
やるなというのにやるのは人間の心情だろう。
優しさもあるのかもしれない。
優越感に浸っているのかもしれない。
すると、立て札の下の方に、どう見てもどう考えてもいたずら書きがしてあった。
『見つけた場合はかかと落としをしてください』
オレは無条件でその指示に従った。
おじさんの身体からは、『バキッ!!』といっただけで、
野鳥たちは何事も無かったようにしてエサをついばんでいる。
―― いい根性してるよなぁー、全く逃げる気配もなかったな… ――
オレは少し離れたベンチに腰掛け、
身体をM字にして今にも両目が落ちてしまいそうなおじさんをモチーフに、
満開の桜の絵を描き始めた。
なかなかいい出来栄えだと感心した。
そしてこの絵だが、桜の『S』とおじざんが『M』になっていることから、
安直に、『SM』というタイトルに決めた。
そしてオレは警察の事情聴取を受けるため、ソフトSMならぬ軟禁状態を経験した。
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