不手際と諦めと ①

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不手際と諦めと ①

非情に徹することもできた 有無を言わせず放り込み 都合の良いように扱うことも やろうと思えば可能ではあった だが、それはしなかった。出来なかった。 彼が目覚め、眼が合い 私のことを『天使』と呼んだ それは世辞でなければ嫌味でもない 純然たる気持ちだった だが、そんな純粋な言葉は 自責と後悔の念となり心を塗り潰していく ――そんな眼で見られるような高尚な存在じゃない だからこそ、私は自らを卑下し 道化を演じようとしてみせた そうすることで、私という存在は 畏敬の念を抱くに値しない愚か者であると認識させようとした だが、結局のところ道化には未だなりきれずにいる 否 道化を演じようとしているこの姿こそ まさしく道化(愚か者)なのだろう
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