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「…貴司さんは」
「うん?」
姿勢そのままに、リリエルは話す
「貴司さんってあんまり怒らないんですね。
普通ならもっと怒ると思いますし、こんな失態を起こしたというのに対処法をすぐに考えましたし」
「…怒られたくてやってんの?」
「危ない人じゃねーッスか!?滅相もねえ!
…ただ、どうしてそんな平然としてられるのかなーって。
そこら辺がちょびっと気になりまして」
リリエルの疑問はもっともではある
人生を半ば無理矢理決められ、相手の手違いで本来あるべき力を失い
取り戻す為にわざわざ自分が動かないといけない。
そんな状況ならば怒り狂い、悪態を吐き、恨み言のひとつやふたつも言ったところで何の不思議もないとは思うし理解もしてる
「諦めてるから、かな」
「…諦めてる?」
「ほら、人間諦めが肝心とかって言葉あるよな。
どれだけ考えても何をしても状況が変わらないならいっそ諦めて受け入れる方が楽だろ?他のことを考えればイライラしなくて済むし」
そう言うとリリエルは黙り込んだ
顔は地面の方を向き、表情を窺うことはできない
「…もし」
俯いたまま、問い掛ける
「もし、諦められない状況だったらどうします?
手も足も出せないのに
諦めたら終わりが待ってる
退くことの出来ない状況だとしたら?
…それでも諦めますか?」
表情こそ分からない。
だが、その言葉の中でいつものふざけた様子は微塵も感じなかった
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