いつもの。

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「はあ…それで?異世界ってどんなところだ?」 文句のひとつやふたつ…いや 数え切れないほどはあるし 一方的な物言いに憤りも感じている。だが 言ったところで解決なんてしないし、彼女もそう言っていた つまること、何を言っても無駄であり諦めるしかなかったのだ どうにもならないのならいっそのこと 気持ちを切り替えるしかないと自分に言い聞かせながら 貴司はリリエルに尋ねる 「よくぞ聞いてくれました! 異世界…その名は『メルファリート』。 貴司さんがいた現世とは180度違う剣と魔法の世界!モンスターもいれば亜人もいるロマンと冒険に満ちたファンタジー世界ですよ!」 「ファンタジーって…アニメやゲームにあるみたいなやつか?」 「exactly!貴司さん実は好き者です?」 「人並みに知ってはいるよ。 異世界転生って本も読んだこともある」 「なら説明とかいりませんね?貴司さんはこれから『メルファリート』に転生します。モチロン神界のサポート付き!力は使い放題の無双ゲーッスよ!ウッハウハのハーレム作りますか?それとも天下の大富豪?それこそ伝説の勇者?なんでもござれですよ!準備はよろしいですか?」 「駄目でも始めるつもりだろ?」 「ご理解頂けて何よりです!」 リリエルが宙に手を翳すと、その場に半透明の四角いディスプレイのようなものがその場に無数に現れる そのひとつひとつに風景。山や森、海や空、様々な映像が映し出される 「それが『メルファリート』か?」 「そッス。先ほども言いましたが 剣と魔法の世界…科学は無いッスけど、大部分が魔法で代用しています。昔こそ戦争はありましたが今はお互いが手を取り合い、協力しあっています」 そこにはお伽噺のような光景が代わる代わる映し出されていた 街の喧騒、広大な草原。ビルほどはあるだろう大きさの木造船 多種多様の種族の交流の様子と戦いの映像 皆が生き生きとしていて、刺激に満ち溢れている そのどれもが貴司にとっての非現実的で 彼らにとっての日常の風景 「…いいとこだな」 「ヘヘッ。そう言ってくれると嬉しいですね」
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