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むかしむかしあるところに、とても立派なお屋敷がありました。王様とも親戚の、由緒正しい家柄です。その家の主はやはり由緒正しい家柄の娘を妻として迎えましたが、夫妻の間にはなかなか子どもができませんでした。
ある日、夫妻は大勢の人を呼んで、玉のような赤ちゃんを披露するための盛大な宴会を開きました。やっと一人娘を授かったのです。
その宴会では一人の女中がほかの召使と一緒に忙しく働いていました。よく見るととてもきれいな若い女中です。
実は赤ちゃんを産んだのはこの女中でした。女中は主からほうびをたくさんもらう代わりに、自分が実の母親だと名乗り出ないことを約束したのです。
女中はその後も乳母として赤ちゃんの世話をすることができ、主も親切にしてくれたので幸せでした。でも本当は主と結婚できればいいのに、とずっと思っていました。
赤ちゃんは美しく成長して15歳になりました。この国では15歳から結婚ができます。彼女が誕生日を迎えてすぐ、母親は彼女に婿を取らせました。婿は彼女より倍も年上でした。婿は夫妻に対してはとても感じよく接していましたが、実は財産目当てでした。
娘は母親にまだ結婚はしたくないと泣きつきました。しかし実の子ではないので同情もしてもらえません。母親は内心では、年を追うごとに実の母親に似て美しくなる娘に嫉妬をしていたのです。夫がそんな娘を可愛がるのも我慢できませんでした。
母親は夫を説得し、娘夫婦にその屋敷を譲って、自分たちは遠い国へ引っ越してしまいました。
女中は娘の世話をするために残りました。それでも親子であることは打ち明けません。主との約束ですから。
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