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後妻は家庭教師を雇って子どもたちによい教育を与えようとしました。しかし婿は「女は嫁に行くのだから教育などはいらない」という考えでした。後妻はしかたなく、こっそり財産をかすめとって家庭教師を雇いました。
ある日、末娘がお習字の先生に叱られて泣いているのを見た女中は、後妻が勝手に財産を使っていることを婿に告げ口しました。婿は怒って、後妻をフライパンでひどく叩きました。
家庭教師を雇えなくなった後妻は、今度はどうにかして自分で娘たちを教えようと一生懸命になりました。娘たちにはどうしても教養をつけて、自分より幸せになってほしかったのです。
いっぽうで女中は、可愛い末娘が泣くのを見ると耐えられません。教養がなくても、美貌を見初められさえすれば裕福な男性と結婚できるはずです。女中はかつての自分が果たせなかったことを、孫である末娘に果たしてほしいと強く願っていました。
女中はたびたび、末娘が一人でいるときに声をかけました。そのたびに甘いお菓子をあげたので、末娘はすっかり女中に懐きました。
女中は「かわいそうなお嬢様」と、さめざめ泣きました。継母だからわざと厳しくしていじめているのだ、と教えました。後妻を実の母だと信じていた末娘は驚きました。
女中は何度も繰り返して言いました。あなたは二人の姉に似ていないどころか何倍も美しい、だから継母はあなたを憎んでいじめているのだ、と。女中は本気でそう思っていましたし、末娘もだんだんと、そうに違いないと思うようになりました。
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