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舞踏会当日、継母にはちょっとした仕返しの気持ちもあって、末娘だけは置いていくことにしました。
末娘はかんしゃくを起こして暴れました。みんなが出て行こうとすると、さらに大声で泣き叫びます。
継母と上の姉はあきれるばかりでしたが、特に気の優しい下の姉が同情して振り返りました。「だったら、私のドレスを着ていく?」と、自分が今着ている晴れ着を指します。
末娘はぴたっと泣き止みました。最初からそれが目当てだったかのように、にっこり微笑んで「私なら王子様を射止められるわ」と自信満々に言いました。
継母は鳥肌を立てて、末娘を突き飛ばしました。
「おまえの不幸は、自分の美貌を知っていることだよ」
そして暖炉から灰をとってくると、末娘の頭から浴びせました。
ふたたび火がついたように泣き出す娘を置いて、3人はさっさと出かけました。
馬車が門を出て行くのを見届けてから、女中は静かに、けれど急いで行動を起こしました。泣き疲れた末娘が暖炉の脇に腰を下ろしてぼうっとしているところに声をかけます。
「お嬢様」
顔を上げた末娘の目が、とたんに輝きました。
そこには姉のよりもよっぽど素敵な晴れ着がありました。宝石やリボンがたくさんついていて、高級なレースもたっぷりとあしらわれています。それは昔、女中が主にもらってからずっと取っておいたお金で仕立てたものでした。
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