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「これを私に?」
末娘は感動して涙を浮かべました。その愛くるしい表情に女中も泣きそうになりましたが、ゆっくりしている時間はないと、慌てて支度をしました。灰を落として着替えさせ、髪型を整えて化粧をさせます。
表に出た末娘は、門のところに6頭立ての立派な馬車が停まっているのを見て、また泣きそうになりました。
「まるで魔法だわ」
女中は満足そうに微笑んで「そうよ、私は魔法使いなのよ」と頷きました。
ただし、馬車は買ったものではありません。女中のお金では数時間借りるのが精いっぱいでした。乗り込む末娘にくれぐれも念を押します。
「0時を過ぎると魔法が解けるわ。その前に帰ってくるのよ」
末娘は感謝を述べ、喜んでお城の舞踏会へと向かいました。
お城に到着した末娘が王子様のハートを射止めるのは、本人が予言した通りにとても簡単でした。
王子様は今年40歳になります。今まで何度も縁談はありましたが、すべて婚約にはいたりませんでした。何しろ、王子様の好みはとても若い少女だったのです。
このままでは一生結婚ができないと焦った王様と王妃様が企画したのが、今回の舞踏会でした。この際、家柄や育ちは問わない、誰でもいいから気に入った娘と結婚してほしいと考えたのです。
末娘はやっと15歳になったばかり、おまけにとても小柄で幼く見えました。ひょっとしたら10歳ほどにも見えたでしょう。
彼女が広間に入ってきた瞬間から、王子様の目は彼女に釘付けでした。ダンスの素養がなくても、立ち振る舞いにほんの少し品がなくても、その子どもっぽさがかえって王子様を夢中にさせました。
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