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どれから聞けばいいのかわからなかった。そもそも自分が幽霊かどうかもわかっていないようなのに、質問したところで意味があるのかというところだ。
影ことコッコは「どうしたの?」と言わんばかりに首をかしげている。
「何で、急に……こんなところに現れたの?」
とりあえず聞いてみる。聞かないことにはどうしようもないというか、不可思議なものを不可思議なまま放っておけるほど神経の太い人間でもない。理由がわからないというのは不安にもなる。
これまた、コッコは首をかしげる。
「……何か、名前以外でわかることってある?」
何から聞いていいかわからなかった。そもそも、こういうことが起きて叫び声もあげずにお話している自分がすごいなと思う。……思ったよりも神経の太い人間なのかもしれない。そんなことを考えながら苦笑した。
俺の問いにぶんぶんと首を振る影。
「そうか……」
困ったことになった、のか? ひとまず、コッコは自分に害をなすような感じでもない。それになにより、先ほど触れられた手のひら。不思議と懐かしいような温もりを感じていた。
コッコは再び、手のひらに文字を書く。
――ここにいてもいい?
「ここに?」
突然の申し出に戸惑う。幽霊みたく消える存在ではないんだなと思いつつ、「いいよ」と何も考えずに言っていた。幽霊みたいに出ては消え、ができないのなら行き場所がないと困るだろうなぁとか。深くは考えてない。だけど、行き場所もなくさまようのは怖いだろうなと感じた。多分、自分の今の不安に重ね合わせているだけなんだろう。でも、コッコが行き場所もわからないままさまようのは可哀そうだなと思った。
――いいの? いいの?
二度、素早く力強く書くというところに、「あ、喜んでるんだな」という感じが伝わってきた。
「いいよ。何もわかんないんだろう? 不安だよなぁ」なんて、コッコを心配する言葉が口を衝いて出る。
この言葉は自分にかけたい言葉だった。最近、俺を悩ませる憂鬱にコッコの姿を重ね合わせている。コッコへの同情は自分への哀れみだ、なんてことを考えてしまう。
別に大きな悩みではない。多分、誰しもが抱えてる悩み。特に自分と同じ年代の人間なら考えない人の方が少ないと思う。
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