SHADOW DAYS

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 日常の一枚一枚の写真がどんどんたまっていく。傍から見ると合成写真のようなシュールな写真ばかりだ。コッコの写真を撮るがてら、最近は就活の息抜きに外にまで写真を撮りに行くようになった。上手いかどうかはわからないが、撮っている間は夢中になっていた。  季節は過ぎ、コッコが現れて半年。就職活動はしているものの、まだ内定はもらっていない。周りで内定をもらう友達が増えていくだけに内心焦る。 「裕太! 俺、あの会社に内定もらったよ!」と、友達は無邪気に笑う。 「マジで? あの会社行きたいって言ってたもんなー」  もちろん、喜んでいる気持ちは本当だ。でも、やはりうらやむ気持ちもあるし、さらに焦っていく。それに何より、行きたい会社があったり、こういう職種がいいという希望があることがうらやましかった。  俺の好きなことは写真を撮ることだとは思う。でも正直、食べていけるかわからないことを仕事にすることは不安があった。だから足繁く学内の就職支援センターに行っては求人情報を探す。就職支援の職員さんに話を聞いたり、就職支援講座も受けたり。もう何十社も面接を受けた。職種は問わず、とりあえず無難なところはすべて受けた。しかし、それでもまだ内定はもらえない。……焦る。  おかえりなさい、とでも言うかのように、テレビの電源を付けたり消したりを繰り返すコッコ。今日も面接を受けてきたけれど、手ごたえのほどはどうか、という感じだ。 「ただいま」  あまり笑えないまま、スーツも脱がずにバタリとベッドに倒れこむ。リクルートスーツは何と苦しいんだろう。まるで首を絞めつけるかのようなネクタイに、スーツは囚人服のようだなと自嘲気味に思う。  重い背中の上を手が這う。どうやらコッコがマッサージをしてくれているようだ。 「ありがと、コッコ」  不思議と温もりがある手のひら。コッコとの生活も慣れたものだなぁと思う。最初はただコッコが可哀そうなだけだったのかもしれない。何なら、もしかしたらコッコは俺の不安が形になったものなんだろうかとも思った。けれど、毎日増えていく写真と、ちょっとした温もりがコッコの存在を強くする。万が一、何かの拍子にコッコが消えてしまったとしても、もうコッコは幻だったなんて思えないだろう。 「もう大丈夫、ありがとう。着替えるかな」  俺は起き上がって、スーツを脱ぎ始める。今日も写真を撮ろう、コッコの写真を。
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