奇妙な同居人?

2/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 目が覚めたら、目の前にふわふわした綿毛が転がっていた。  ワンルームマンションの狭い部屋。  布団を敷いたら部屋の半分が埋め尽くされてしまうほどの広さしかない部屋。  フローリングのその部屋の床を、ころころと綿毛が転がる。  白くて柔らかそうな丸いそれは、部屋のかすかな空気の流れによってか、絶えず動きまわっている。  見た目はタンポポが白い綿毛を全方位に向けて生やしている時のものに近い。あれよりは毛の密度が多いから、真っ白になっていて、白いハムスターか何かが丸まっているような状態だ。  こんな白い綿毛が出るような家具や服を持っていた記憶はない。どこかから入り込んだのだろうか。  寝ぼけ眼でそれに向かって手を伸ばしたが、その手の動きによって発生した風によって、その丸っこいのはころころと手の届かない位置に転がっていってしまった。  とりあえず体を起こし、ひとつ伸びをする。  まあまあの目覚めだった。体にだるいところもない。  休みではないから出社しなければならないが、いつも起きる時間よりも十分程度早く、余裕を持って準備を始めることが出来た。  手早く朝食の準備をしたり、身支度を整えたり、朝の準備は忙しいが、少し早目に目覚めたおかげで気持ちに余裕があった。  朝御飯もきちんと食べ、家を出ようとしたところで、足下をあの白い綿毛が転がっているのに気づく。  そういえば朝の準備をするうちにすっかり忘れていた。白くて綺麗とはいえ、埃が玉になったものが転がっているようで落ち着かない。さっとゴミ箱に捨ててしまおう。  そう思って屈み、白い綿毛に向かって手を伸ばした。  その手を、白い綿毛がひょいと避ける。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!